2023
06.03

ホームでもアウエー

八重山, 未分類

 外国籍の人が際立って多い群馬県大泉町に初めて行ってみた。取材の手掛かりがあるわけではないので、ぶらぶら歩くつもりでいたが、大泉町観光協会のウエブサイトを見てみたところ、「活きな世界のグルメ横丁」というイベントが開かれる日が分かったので、これに合わせて訪れた。

サンバのステージは人気のプログラムだ=2023年5月28日、群馬県大泉町

<大泉町観光協会のウエブサイトはこちら>
https://oizumimachi-kankoukyoukai.jp/

 キッチンカーでエスピナーダを買おうとして、1パック2個入りのを1パックお願いした。すると、店の人が私に2パック渡そうとしたので、説明し直して1パックだけにしてもらった。もし、私が台湾で屋台の店員になり、台湾ネイティブの人から「何なにをなん個ちょうだい」と言われたら、まごつくかもしれないと思いながら、1パック分の代金を払った。

20年でようやく

ベトナムの食べ物や雑貨などを販売する屋台では、笠がアクセントになっていた=2023年5月28日、群馬県大泉町

 

 大泉町に行ってみようと思ったのは、石垣島にやってきた台湾人たちのことをイメージする手掛かりが欲しかったからである。

 石垣島にやってきた台湾系の人の中には、ほぼ台湾語だけで暮らし、片言の日本語でやりきってきた人がいる。市場で買い物をする時は、自分の財布を開いて必要な額を取ってもらうのだという。この人は自分で商いをする人でもある。エスピナーダの数を聞き間違えるぐらいなら大したことはないと思えるほどしなやかさがあるのだろう。いったいどうやって生き抜いてきたのか。

 この人とは顔見知りになって20年近くになる。顔を合わせてもほとんど話はせず、コミュニケーションはあきらめかけていたが、最近、顔を合わせる機会があるとにこっと笑ってくれたり、日本語で簡単な話をしてくれたりするようになった。これくらい時間をかけてようやく、話の取っ掛かりが生まれるということもあるのだった。

「多文化を身近に」

 大泉町や大泉町観光協会のウエブサイトによると、「グルメ横丁」は2010年4月にスタート。「人口の約18%がブラジルやペルーをはじめとする約45カ国の国籍の方々が住むという、多文化を身近に感じる町」という特徴を生かし、お国自慢の料理や雑貨を出し合い、国際交流の場とすることが目的だという。

 石垣島にいる台湾系の人は多く見積もっても1000人ほど。人口に占める台湾系の人は1%内外ということになるが、このなかには台湾ルーツであることを意識する機会の少ない3世以降の人がかなり含まれているので、実勢はもっと少ないというべきだろう。大泉町の18%というのは1ケタ多い規模ということになる。

会場のごみ箱にはポルトガル語の表記があり、「ごみ」「紙」「ペットボトル」などと書かれている=2023年5月28日、群馬県大泉町

時に姿を現す

 グルメ横丁を見にいった翌週、平日の午後に再び大泉町を訪れた。日本人の男性に外国人との付き合いについて聞いてみた。すると、こんなことを言っていた。

 「日本人ばかりのアパートでも、隣にどんな人が住んでいるのかはよく知らないと思います。ここでもそんな感じになっているのではないでしょうか。居るのが当たり前で、特に気にしないようになってきていると思います」

 なるほど。互いに相手にしないとか、無視するとかといったネガティブなニュアンスではない。外国人が居ることが当たり前になってきたということなのだろう。用事があれば声を掛けるし、なければないで、特段どうということはない。

 ボーダーは、時に目に見え、時には隠れて人目につかない存在のようである。

【トップ画像の説明】ブラジルの肉料理「シュラスコ」の屋台=2023年5月28日、群馬県大泉町

★松田おすすめの1冊★

大泉町を等身大に描き出す。

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