08.27
バンナ岳を望む風景 お盆の「三合院」を訪ねる
三合院を模したその家から望むと、石垣島のバンナ岳の深い緑がどっしりと構えている。庭は、視線を少しバンナ岳の右側へそらすように向いていて、旧盆のお供えをするために用意されたテーブルも、同じ向きで中心にしつらえてあった。だいたい南西向きといったところである
五穀豊穣
ご家族の方にうかがうと、外のお供えは、五穀豊穣や豊作を祈願するためのお供えなのだそうだ。家の中には、中央にちゃんと仏壇があり、ご先祖様のご位牌がある。そこにもお供えがしてあるが、それとは別に、庭でもお供えをするのである。
パインアップル、スイカ、バナナ、パッションフルーツといった果物のほかに、豚の三枚肉や魚、鶏肉といった定番のお供えが並んでいる。そして、このお宅のお供えで絶対に外せないのはチマキである。自宅のかまどに薪をくべ、大鍋に湯を沸かして蒸すのである。ご飯を包む竹の皮は、近くで取ってきたものを干して使い、薪の調達では建設現場などから廃材を手に入れることもあるとか。自然の植物資源をそのまま、あるいは巧みにリユースして、供え物を用意するのである。
沖縄の旧盆は、旧暦7月13日から15日までの3日間というのが最もよく知られたスタイルだ。13日に仏様をお迎えし、15日にお送りする。石垣島でもこれが一般的なのだが、台湾系の人たちは旧7月15日だけで済ませるケースが多い。こちらのお宅もそうだ。
そして、屋外に盛りだくさんのお供えを用意するというのは、石垣島で台湾系の人たちのお盆にお邪魔すると、よく遭遇するスタイルである。こちらのお宅では、庭のお供えは五穀豊穣や豊作祈願のためのものという意味合いを持っているが、別のお宅では、行き場のない仏様(無縁仏)のために用意したお供えだと聞かされることがある。
さまざまなお盆
どちらが正しいかということは問題ではない。
同じ台湾系の人たちといっても、石垣島へ移住してから時が過ぎ、世代を重ねることによって意味づけが変化していったのだろう。石垣島に根を下ろすなかで、お盆やお供えに求める期待が変わっていくのである。
こちらのお宅では、外のお供えの一皿ごとに、火を付けた線香が供えられていた。一本ずつ供える必要はないと思いつつも、上の世代からそう言われたから続けているやり方だ。このお線香は、別のお宅では、無縁仏が迷うことなくお供えにたどり着けるようにするためのものだと聞いたことがある。さまよえる仏様たちが、仏壇のお供えを食べてしまわないようにガードする役割もあるそうだ。
庭のお供えに一本ずつ供えるというスタイル。ビジュアル的に同じように見えても、お盆に込めるものはさまざまなのである。