04.06
宜蘭の食堂で「猫」に出合う
宜蘭へ行く用事があり、昼食を取る店を事前にチェックしていた。地図アプリで街の様子を眺めていると、「猫」という文字を見付けた。行ってみることにした。
猫のワンタン屋
「大猫扁食麺」という名前の食堂。体格のいい猫がワンタン(扁食)を出してくれるのだろうか。ま、そんなことはないだろうが。
場所は、宜蘭市内中心部。鍋に湯気を立てた店先の風景はいかにも庶民的で、台湾ではお馴染みのたたずまいだ。看板ネコが店の隅で丸くなっているといったこともないようなので、店の人に店名の由来を尋ねた。すると、以前この店を切り盛りしていた人の風貌が猫に似ていたことからこの名が付いたとのことだった。猫が、ではなく、「猫のような人」がワンタンを出していたことになる。

この店のそばには、別の店が「猫耳」というメニューを出している。1942年創業という80年の老舗「信利號」だ。「猫耳」が何を意味するかは店に入ろうとしてすぐに気付いた。小粒な餃子を思わせる大きさの、三角形っぽい具が山盛りになっているのである。形状は、角の取れたチマキといったところか。「猫の耳」と命名してしまいたくなる気持ちもわかる。
「猫の耳」を食べる

中に何が入っているのか。調理鍋の前に立っている男性に尋ねてみると、「豚肉と野菜が入っているよ」とのこと。創業当時からのメニューではないものの、数十年前から売っているそうだ。
「猫耳湯」というメニューを頼み、店に入る。「猫耳」を五つ浮かべた小ぶりのお椀がすぐに出てきた。店内を見渡すと、同じものを頼んだ客があっちにもこっちにもいる。この店の定番料理らしい。

ひとつすくって口に運んでみる。ふるふるとした厚みのある皮の奥に、複雑な餡を感じた。調理鍋の男性に教わった予備知識を頭にうっすらと思い浮かべながら咀嚼してみる。確かに、肉と野菜を使った餡から旨みが広がる。
宜蘭行きを終えてから、ネットで「猫耳」と検索してみた。まずトップに上がってくるのは、髪留めに使うカチューシャに三角形の飾りを付けてネコのようにしたアクセサリー。この手のアイテムが続々と出てきて、信利號の猫耳は後のほうになって登場する。猫耳を「水晶餃」というジャンルに位置づけている記事があった。半透明の皮で包んだ餃子などのことを示しているらしく、食べ物の透け感に「水晶」という言葉を当てはめるとピュアで繊細なイメージになる。「猫」というネーミングにこだわらなければ、餃子の一種といっても十分通じる。
50元硬貨1枚で、1杯の猫耳湯を味わうことができる。台湾版ワンコインで、「猫」について思索をめぐらす豊かなお遊びの時間をいただいた。
【トップ画像の説明】
信利號のメニュー表。「猫耳湯」は50元である=3月10日、宜蘭市内


