2025
07.22

八重山と台湾のパイナップル

八重山, 台湾, 沖縄

台湾のパイン売り=2025年5月13日、台南市東門路一段

 石垣島のパイナップルがどのように「おいしい」パインとして確立されていったかを取り上げた本『パインと移民』(新泉社、2024年2月)。著者の廣本由香氏は福島大学行政政策学部准教授で、2014年9月から調査のために石垣島に通い、2016年6月から1年余りの間、石垣島パイン生果組合名蔵でアルバイトをするなど名蔵嵩田の人や風土に密着してきた人です。石垣島に移住してきた宮古出身者や台湾系の人たちがパイン生産を通じて「地域社会の中で社会的承認を獲得して」いったと分析し、パインをモノサシにしながら人の関係にも言及しています。

 八重山のパイン産業は、缶詰用の加工原料を栽培するために発達してきましたが、それが現在のようにカットフルーツとしてそのまま食べられる生食用を主流とするスタイルに転換してきました。本書は、八重山のパイン産業の足取りを詳細にたどり直しており、パインをめぐる八重山の近代産業史としても読むことができます。

 2019年の博士論文をベースに、一般書として読みやすい体裁に改稿したのが本書です。廣本氏は、生産者がパイン栽培に適した酸性土壌の優位性を肯定的にとらえるなど、価値を転換させることにより、「主体性と自己評価を確立」していったと述べています。

 膨大な文献を読み込む一方で、農業生産者との間で重ねてきた対話が随所に盛り込まれています。嵩田の島本哲男さんからは「7月に入ると一夜にして、急に酸味と甘みのバランスが『パチッ』ってなるんですよ。スイッチを切り替えたみたいに」という言葉を引き出し、地域資源としてのパインを支える生産者のこだわりを伝えています。

 360ページ。3500円+税。

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