08.10
「ひめゆり特別展」in 高雄
台湾の高雄市立歴史博物館で、ひめゆり学徒の沖縄戦をテーマとする特別展「学校から戦場へ—ひめゆり学徒隊の沖縄戦 台湾特別展」が2026年7月24日から9月13日まで開かれています。展示では、約30枚のパネルや体験者のインタビューを紹介する動画や証言集などを通じて、ひめゆり学徒が経験した地上戦について伝えています。私は、初日と2日目の様子を会場で取材しましたが、台湾の人たちが展示パネルを長い時間かけて読み、証言を記録したテキストやビデオと熱心に向き合っている姿が印象的でした。

台湾と沖縄は、第二次世界大戦の様相は異なっています。
ひめゆり平和祈念資料館(沖縄県糸満市)の普天間朝佳館長は開会式のあいさつで、「(同展の)準備を通して、私たち自身も台湾の歴史や文化を学ぶ貴重な機会に恵まれた。互いの歴史を学び合い、平和についてともに考える場となることを願う」と期待を述べました。
戦争に動員された女子学徒を主人公とする展示会ということで、特別展では、高雄州立高雄高等女学校についても取り上げています。その説明では「1938年の国家総動員法公布後、台湾は戦時体制に入り、学校生活も大きく変化した」と述べ、さらに、太平洋戦争勃発後の状況については、次のように説明しています。
男性労働力の不足を補うため、女性の動員は拡大し、その役割は補助的なものから重要な担い手へと変化しました。女学生たちは「学徒奉公隊」を結成し、畑をつくり、農作業に従事し、食糧増産に取り組みました。戦時体制のもとでは、学業の追究や教養・技芸の養成に加え、「皇民」としての責務を担うことが求められました。
また、展示では、沖縄戦の前段階として、次のように解説していました。
(1944年)10月、米軍は台湾上陸作戦を放棄し、沖縄上陸作戦へと方針を転換します。まもなく、米軍はフィリピン進攻に備えて沖縄と台湾を空襲し、飛行場や港湾などの軍事施設を破壊しました。その後、日本軍(大本営)は米軍が台湾に上陸する可能性が高いと見て、沖縄に駐留していた部隊(第9師団)を台湾に移動させました。
こうした展示をどのように見るべきなのでしょうか。
今回の特別展でコーディネーターを務めた台湾の朱恵足・中興大学教授は「台湾と沖縄は、戦争体制の中で訓練に駆り出されるなどの共通の歴史の経験があった」と指摘し、台湾で地上戦が起きれば、ひめゆり学徒と同じようなことになるという“歴史的な想像力”の必要性を強調しています。現在、台湾と沖縄では、米軍基地をめぐってさまざまな考え方があり、立場を異にすることもあります。こうした状況について、朱教授は「(沖縄では)地上戦を体験し、その経験が語られて、継承されてきた。そういう歴史が平和を求める気持ちの原点だということを(台湾の参観者に)理解してほしい」と述べた。
特別展2日目に行われた普天間朝佳館長の講演では、朱教授のこうしたコメントと呼応するようなやりとりがありました。
質疑のなかで、来場者から「沖縄は重い歴史を抱えている。沖縄に対して敬意を持ちながら観光するにはどのようにすべきか」との質問があったのです。台湾では、沖縄は観光地として定着しており、2025年度に台湾から沖縄を訪れた観光客は、前年度を39・6%上回る123万2600人でした。台湾からの観光客は、外国人観光客全体の41・9%、観光客全体の11・3%を占めています。
沖縄へ遊びにくる台湾の人たちは、沖縄戦の歴史とどう向き合えばいいのでしょうか。
普天間館長は「私たちも海外の歴史は知らないことが多い」と述べ、質問者の立場とそれほど変わらないとする立場を説明したうえで、「ひめゆり平和祈念資料館は観光ルート上にあり、ふらりと立ち寄って沖縄の歴史と向き合うことができる場所。自分自身や、沖縄の歴史・記憶と向き合っていただきたい」と答えました。多言語対応の翻訳機も用意され、外国人が参観しやすい環境づくりに取り組んでいるとのことです。

講演の会場には、石垣市登野城出身の元ひめゆり学徒で、ひめゆり平和祈念資料館の館長も務めた故・宮良ルリさんのお嬢さんも姿を見せました。講演後にお話をうかがうと、「沖縄で(沖縄戦と)どう接したらいいのか(台湾の人が)尋ねていた。この台湾の人たちの心の広さや心の持ち方は見習わなければならないと思った」と感想を語りました。
太平洋戦争の体験は、沖縄と台湾では異なっています。しかし、なにがどう異なっているのかを理解することは簡単なことではありません。それだけに、特別展を通じて行われた対話は、貴重な機会だったということができます。
展示会は9月13日まで開かれます。その後、10月3日から11月29日までの間は、台北市内にある二二八國家紀念館でも開かれます(二二八公園にある台北二二八紀念館とは異なります)。10月3日には、仲程昌徳氏(沖縄県女師・一高女ひめゆり平和祈念財団前理事長)が「台湾と沖縄—疎開・引揚の語りから―」(仮)をテーマに講演を行う予定です。
※ この文章は、「八重山毎日新聞」の記事(2026年7月26日付9面と2026年8月8日付9面)と「沖縄タイムス」の記事(2026年7月28日付21面)をもとに再構成したものです。


